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非冷却型遠赤外線カメラ

補正方法(4):シャッタレス補正

画素ごとの感度ばらつきと、環境温度変化の影響を補正する手法として、一般的な遠赤外線カメラにはシャッタを使った補正機能が搭載されています

シャッター作動中は画像出力が途切れるため、連続的な撮影や温度計測ができません

弊社カメラには、事前に撮影対象および環境温度で補正テーブルを作成してカメラ内のメモリに格納しています(これを「キャリブレーション」と呼びます)

画像撮影時には環境温度に合わせて自動的に補正テーブルを変更して出力しています。この補正方法を「シャッタレス補正」と呼んでいます。

周囲温度ごとに2点間温度補正テーブルをあらかじめ取得し、FPA温度などカメラ温度に合わせてテーブルを切替えます

写真「直線性試験結果 グラフ」 直線性試験結果

写真「室温変化時のNETD特性 グラフ」 室温変化時のNETD特性

  • 周囲温度の変動にかかわらず、温度計測が可能
  • 補正テーブル群の作成=キャリブレーションに時間を要する

補正データ

25℃-30℃で2点間補正後、FPA温度を変化させ、NETDを測定

写真「NETD測定グラフ」

50℃付近を拡大

写真「NETD測定50度付近拡大グラフ」

FPA温度が0.1℃変化するだけで、NETDが30%ぐらい悪化する

0.1℃単位でキャリブレーションデータを作成する必要がある

補正データ作成時間とデータ容量の問題

カメラの周辺温度:-30~60℃(90K)
  • 0.1℃単位で測定した場合:900Step
カメラの撮影温度:-30~60℃(90K)
  • 10℃単位で測定した場合:9Step
カメラのデータ作成時間:-30~60℃(90K)
  • 恒温槽温度変更に1Step=10分
  • 黒体炉の変更及び測定に1Step=10秒
  • 全温度測定:900×(10分+9×10秒)=10,350分
  • 24時間稼働で約7日間補正データ取得に必要
  • 2点間補正データ容量:約3.7GByte

コストが高く、製造に時間が掛かりすぎ
⇒ キャリブレーションレスカメラ

VOxとα-Siの違い

非冷却型赤外線センサーの材料(受光素子)としてボロメータが広く用いられており、ボロメータとして、VOx(酸化バナジウム)やα-Si(アモルファスシリコン)などを薄膜状に形成させた材料が製品化されています。

  VOx α-Si
抵抗値 100KΩ~1MΩ 1MΩ以上
構成要素 Vo,Vo2,Vo3 Si
温度再現性 悪い 良い
NETD 良い 悪い

写真「VOx α-Siの比較 輝度・温度・時間のグラフ」

VOxは、環境温度が変化して同一の環境温度に戻っても
同じ輝度を出力しない

シャッタレスができない

シャッターについて

センサーの全面を均一な温度面の板が覆う構造で、シャッターを稼働すると約0.5秒間画像が撮影できなくなります

不安定なVOxセンサーでは、センサーの温度が変化すたびに、シャッターを閉じて補正を実施します

ナイトビジョンカメラでは、この0.5秒の死角は、大きな欠点になります

写真「センサー、シャッターの構造図」

キャリブレーション装置

写真「キャリブレーション装置 構造図」

写真「キャリブレーション装置」

  • 撮影温度範囲と環境温度範囲を入力すると、黒体炉と恒温槽の温度を自動で制御して画像を取得し、シャッタレステーブルを自動生成する
  • キャリブレーションを1カメラを約3時間程度まで短縮

カラー表示

写真「カラー表示」温度(輝度)により色を付けている
(赤:高温 青:低温)

写真「温度表示目盛り」

写真「白黒表示」14bitの輝度データを256階調
白黒で表示

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