技術情報Technology

量子型センサカメラ

量子型センサーの指標

カメラの性能を見極める為のセンサの仕様部分について、「暗電流」「Full Well Capacity」「QE(量子効率)」の3つが主なポイントとなります。 ほかにも「ROIC Noise」「受講感度」があります。

暗電流(Dark Current)
センサーに光が入っていない時に流れる電流
Full Well Capacity
受光した光を電子に変換したものを収容できる容量
QE(量子効率)
光電流として取り出される電子あるいは正孔の数を入射フォトン(光子)数で割った値
ROIC Noise
読み出し回路が発生するノイズ
S(受光感度)
ある波長における入射光量1W時の出力(A/W)

暗電流(Dark Current)

センサーに光が入っていない時にも流れている電流のことをいいます。 暗電流はノイズとなりますので暗電流をできるだけ小さくする必要があります。 暗電流が小さいほうが感度の良いセンサーです。 暗電流は温度に比例して大きくなります。暗電流を少なくするために量子型センサーを冷却しています。

写真「暗電流の仕組み図」

  • ダイオードに光が入っていない状態で、ダイオードに流れる電流のこと
  • FPA温度が上昇するにつれ増大する
  • 露光時間分積分されるため、ダイナミックスレンジを大きく左右する

ダイナミックスレンジ:カメラで映している映像が真っ暗な状態から(露出オーバー等で)白くなるまでのふり幅。素子(センサー)が感じ取ることのできる最小輝度(最も暗い部分)と最大輝度(最も明るい部分)の範囲。

写真「露光時間短い場合の分布数/輝度」露光時間短い場合

写真「露光時間長い場合の分布数/輝度」露光時間長い場合

光が入っていない場合
輝度=露光時間×F(Temp)暗電流
光が入っている場合
輝度=露光時間×F(Temp)暗電流+露光時間×QE(量子効率)×光子数

暗電流が小さければ露光時間(カメラの目が見開いている時間)を長くできます。
露光時が長いということは、微量な光をとらえることが出来ます。つまり感度の良いセンサーといえます。

感度の良いセンサー…暗電流が小さい

QE(量子効率) と Full Well Capacity

QE(量子効率)とは…

光電流として取り出される電子、あるいは正孔(電子の反対)の数を入射フォトン(光子)で割った、波長に対して何%読み取れるかの値。
(例) 1電子を満たすのに2フォトン必要ならQE(量子効率)は50%

Full Well Capacity とは…

電子が入る器の大きさ。受光した光を電子に変換したものを収容できる容量。

例えば、20000個のフォトン(光子)がセンサーに入ったとした場合…
図「フォトン(光子)」

20,000個のフォトン(光子)がセンサーに入る

図「フォトン(光子)をセンサーに入れる」

フォトン(光子)を電子に変換する(InGaAsセンサー等)
この変換効率をQE(量子効率)で表す

図「InGaAsセンサー」

例えば
QE(量子効率)=50%とした場合

図「InGaAsセンサーで変換された暗電流と変換電子」

フォトン(光子)
QE(量子効率)=50%
電子の発生:10000個

図「Global Shutter」

露光時間を制御するシャッター

図「Full Well Capacityを表した器」

Full Well Capacityは、電子がいっぱいになる器の大きさ
器の大きさに関わらず満タンになれば
輝度=16,383 となる

20000個のフォトン(光子)がセンサーに入り、QE(量子効率)が50%とした場合
→ Full Well Capacity = 100,000e-(電子)

(14bit出力の場合、輝度は2の14乗=16,383 となので)
Full Well Capacity = 100,000e- 、ADコンバータ:14bitとした場合、
10,000個の電子が入る出力輝度 = 1,628 が出力される

Full Well Capacityと輝度

Fullwellの大きさが異なる場合…
Full Well Capacity が 100,000e-(電子)のセンサーに、10,000e-(電子)が入ると

図「Full Well Capacity 100,000e- のセンサーに10,000e- を入れた構成 」

(輝度の最大が2の14乗=16,383なので)その10%の 1,638 の輝度が出力される

Full Well Capacty が 20,000e-(電子)のデンサーに、10,000e-(電子)が入ると

図「Full Well Capacity 100,000e- のセンサーに10,000e- を入れた構成 」

(輝度の最大が2の14乗=16,383なので)その50%の 8,191 の輝度が出力される

このセンサーは、
Full Well Capacty = 20,000e-(電子) の方が、
5倍感度の良いセンサーになっている

感度の良いセンサーは Full Well Capacity が小さいものである。
しかし、Full Well Capacity が小さいほど、微量な光を取りやすくなり、露出オーバー(白飛び)しやすくなる。
大きいエネルギーを見たい場合は、Full Well Capacity の大きいほうがよい。

暗電流(Dark Current), QE(量子効率), Full Well Capacity

各指標(Dark Current, Full Well Capacity, QE)の差を比較した場合…

暗電流(Dark Current)の差

図「暗電流の差」

Full Well Capacityが同じで、同じ容量のフォトン(光子)は入った場合、
暗電流は常に流れているものなので
暗電流の小さい方が感度が高い

QE(量子効率)の差

図「QE(量子効率)の差」

Full Well Capacityが同じで、同じ容量のフォトン(光子)は入った場合、
QE(量子効率)は電子への変換率が高い方いいので
QE(量子効率)の大きい方が感度が高い

Full Well Capacityの差

図「Full Well Capacityの差」

Full Well Capacityが異なるものに、それぞれ同じ容量のフォトン(光子)は入った場合、
Full Well Capacityの小さい方が感度が高い

ディテクタの差

図「ディテクタの差」

高感度といわれるものは、

  • 暗電流:小さい
  • QE(量子効率):大きい
  • Full Well Capacity:小さい

近赤外線センサー(カメラ)評価パラメータ

弊社の商品「InGaAs近赤外線カメラ」を指標で比較した表です。

暗電流(Dark Cuurent)
NIR-CAM640SN … 30fA
NIR-CAM640HS … 4.5fA
他社製 … 2.5pA = 2500fA

暗電流(Dark Cuurent)は値の小さい方が感度がいいということなので、他社製(2.5pA)に比べて、NIR-CAM640SN は約80倍、NIR-CAM640HS は約500倍、感度が良いということになります。

Full Well Capacity
NIR-CAM640SN … High:43Ke- / Low:1.9Me-
他社製 … 2.5pA = 2500fA

Full Well Capacityは、電子(e-(エレクトロン))を収容できる数を表していますので、「NIR-CAM640SN」… high:43000個、low:190万個 で満タンとなり、 他社製は110万個でいっぱい、ということになります。

指標/機種名 NIR-CAM640SN NIR-CAM640HS 他社製
Dark Cuurent
暗電流
<30fA <4.5fA(285K) 2.5pA(0.5pA)
QE
量子効率
>70% >80%  
Full Well Capacity High:43Ke-
Low:1.9Me-
High:-12Ke-
Low:-0.6Me-
1.1Me-
ROIC Noise High:30e- High:45e-
Low:180e
 
Operability*1 >99.9% >99.5% >99.63%
Spectral Range 0.9~1.7um
(0.5~1.7um)
0.6~1.7um
(0.9~1.7um)
0.95~1.7um
Image Format 640x512 640x512 640x512
Pixel Size 15x15um 15x15um 20x20um
Max Framerate 98Hz 200Hz 62Hz

よく出回っているものは低価格低感度の物が多いので、高感度をお求めの際はぜひ弊社にご相談ください。

1pA = 1000fA
fA(フェムト アンペア) … f(フェムト) = 10-15
pA(ピコ アンペア) … p(ピコ) = 10-12

*1Operability … 欠陥のない画素の割合

フィルターによる減衰

近赤外線カメラを使用する際、受光する光線の範囲を限定する場合などに、フィルターを入れて使用する機会が多くあります。 その際、フィルターによる減衰が発生します。

受光感度 QE(量子効率) / 波長(μm)

図「フィルターなしの受光感度(QE/波長)」フィルターなし

図「フィルターありの受光感度(QE/波長)」フィルターあり

フィルターを入れることにより、フィルターなし時の25%以下の光エネルギーになる

高感度のカメラが必要

近赤外線カメラの補正

近赤外線カメラも、非冷却型遠赤外線カメラと同様に、補正処理が必要となります。
ドット抜け補正や2点間や線形補正などの処理をすることで、出力画像のコントロールを行ないます。

補正前の近赤外線カメラ画像

写真「補正前bit画像」

写真「補正前カメラ画像」

補正後の近赤外線カメラ画像

写真「補正後bit画像」

写真「補正後カメラ画像」

このページのトップへ

English Site